窪田良氏による「アキュセラのテクノロジーと上場までの軌跡」講演会&交流会開催!

今回はBellevue Children’s Academyで行われた窪田良氏の講演会レポートです。100人以上入る広い会場ですが席は全て埋まっていました。会場をご提供いただいたBellevueChildren’s Academy様、ありがとうございました。また、本を提供頂いた紀伊國屋様、ありがとうございました。

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左からSIJP会長今崎憲児氏、Bellevue Children’s Academyディレクター清水楡華氏、ゲストスピーカー窪田良氏です。

まず受付を済ましネームタグをペタリ。いつも通り講演会前に腹ごしらえです。今回も美味しそうな料理がたくさん並んでおり、皆さんおしゃべりをしながらお食事を楽しんでいました。そして7時ぴったりに講演会スタート。講演会の最後には窪田氏の著書『極めるひとほどあきっぽい』のプレゼントクイズが行われるというアナウンスがあり、嬉しいサプライズに会場はそわそわ。

「みなさん目を閉じてください。目の前が真っ暗になりましたよね。失明するということはこういうことなんです。」

友達や家族が見えなくなる、今まで当たり前に見えていた日常がなくなるということがどういうことか考えさせられました。もし失明を治す薬が発明されたなら、何万人という患者さん、その家族が喜ぶでしょうか。窪田氏はそんな患者さんを救う新薬開発に尽力されています。

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「治療法を見つけて患者さんを救いたい」

慶應義塾大学医学部で眼科学研究により博士号を取得。その研究課程で緑内障原因遺伝子であるミオシリンを発見、のちに「須田賞」(日本の眼科研究者に与えられる賞)を受賞。ヒトゲノム計画が最盛期だったため、ミオシリン発見の功績は非常に大きくいろんな有名大学からオファーをいただきました。大学訪問の際に研究環境に惹かれたワシントン大学に2000年より眼科シニアフェローおよび助教授として勤務を決めます。その際に周囲の人々は世界最高峰であるハーバード大学を薦めたそうです。しかし窪田氏は「人と違う発想をする」というモットーでありワシントン大学を選択しました。この選択が後に窪田氏の岐路になります。2000年以降は再生医療が盛んになります。再生医療で最先端分野は骨髄移植ですが、その骨髄移植分野での権威はワシントン大学でした。ワシントン大学では網膜幹細胞における再生医療の研究に取り組んでいました。その研究から神経細胞を長期的に培養できる技術を発見し、 窪田氏は「失明を根絶する治療法の開発につなげたい 」と考え起業を決意します。その技術をもとに2002年に自宅の地下室で起業しました。

「新薬開発の難しさ」

新薬開発には多大なコストと時間がかかります。研究、開発、市場に出るまでの過程には約12年かかると言われています。研究の段階では10,000から30,000の化合物を作り、合成するという作業を繰り返します。ほとんどを手作業で行うそうで、膨大な時間がかかります。その中から反応が見られた約10から20の化合物を試験し、数を減らしていきます。実際に反応が見られる化合物を作れる確率は非常に低いのです。その後は臨床試験をクリアしなければなりません。一般的にフェーズ1では健康な一般男性に。フェーズ2では開発する薬の対象となる疾患患者の方に、フェーズ3では対象疾患患者を対象に大規模臨床試験が行われます。安全性が確立していない新薬に関しての臨床試験被験者を集めるのは難しく、この過程で非常に時間がかかる企業が多いと窪田氏は話します。アメリカでは医学生は学部入学の際、医学分野に関するボランティアの参加が必須になります。新薬開発に関しての国民レベルでの認識の変化が求められており、薄く広くのリスクテイクは避けられない現状であるからです。また薬剤の開発費は年々上がってきており政府予算を圧迫しているというのも現状です。そもそも今までの新薬開発偶発的な化合物の発見に頼ってきたものが多かったそうです。そのためゼロからの発見には莫大な時間と予算がかかるのです。

「人に関する不確かな知識」

バイオテクノロジーは大きな市場規模に関わらず十分な治療法が確立されていない分野が多いのが現状と窪田氏は語ります。人に関してまだ不確かな知識が多く、治療が追い付かないのが現状です。例えば網膜疾患領域市場。(網膜は光を感じるフィルムのような役割を担っており、異常が生じると失明の恐れを伴う可能性もでてきます。一度その機能が失われると今の技術では再生することはありません)独立系調査会社Visiongain社によると 2012年の網膜疾患領域市場規模は51.3億ドルですが2024年には約166億ドルになる見込みと言われています [1]。高齢社会が進むなか、目に関する新薬の重要性はますます高まっています。

「バイオベンチャー企業の必要性」

大手製薬企業とベンチャー企業で新規化合物の承認数を比較するとベンチャー企業の方が勝っているそうです。また研究開発費を比較してみても大手製薬企業は平均で年間500億ドル、対するベンチャー企業は平均で 280億ドルと差は歴然です[2] 。なぜベンチャー企業から新薬は生まれやすいのか。ベンチャー企業は既成概念や合理性にとらわれずイノベーションを大事にしているからだと窪田氏は語ります。大手企業は役員会議を通すので合意を得やすいアイデアしか投資を得られません。しかしベンチャー企業はユニークな価値観を持ちアイデアに同意してくれる投資家が1人でもいたら開発にとりかかることができるのです。イノベーションの創造のカギは3つ。・多様性を尊重すること・価値ある失敗を許容すること・信頼関係を構築することです。

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「起業家としての7つの条件」

10年継続するのは難しいと言われていたバイオベンチャーにおいて成功されている窪田氏が起業家として求められる7つの条件を教えてくださいました。

・忍耐、粘り強さ

・エネルギーと情熱

・リスクの許容能力

・明確なビジョン

・断固たる信念

・高い柔軟性

・チャレンジ精神

窪田氏の明確なビジョンは「世界から失明を撲滅すること」。リスクの許容能力とは、無駄な投資に終わるかもしれないけれども、成功した時には大きな達成につながるリスク。そのアップサイドを見極めてリスクに挑戦してみようという意識をもつこと。単にリスクを取ればいいのはなく、リスクへのバックアップ、つまり致命傷を負わないようにプランB、プランCを用意しておくことも大切だということでした。

「アキュセラ・インク社」

窪田氏のアキュセラ・インク社は世界中で数百万人が罹患している視力を脅かす眼疾患を治療または進行を遅らせる可能性のある革新的な治療薬の探索および開発に取り組んでいる、臨床開発段階のバイオ製薬企業です。新規技術の構築とイノベータ―としての地位を確立しました。

・通常、バイオベンチャーを地下室で設立するのは不可能であると言われていた

しかし、アキュセラは地下室で設立された

・通常、まったくの新規開発候補薬の同定は2年では不可能であると言われていた

しかし、アキュセラはそれを達成した

・通常、薬理学的にヒトの視覚サイクルを調整することは不可能であると言われていた

しかし、アキュセラはそれを達成した

・起業しても、バイオベンチャーは10年継続するのは困難であると言われている

しかし、アキュセラはそれを達成した

・前例のない米国企業の東京証券取引所マザーズ市場への単独上場は難しいと言われる

しかし、アキュセラはそれを達成した

「東京証券取引所マザーズ市場への上場」

2014年、アキュセラ・インク社は東京証券取引所マザーズ市場へ米国企業第一号として単独上場を果たします。そもそもアキュセラは日本の投資家から設立当初より投資を受けていたそうです。日本人がアメリカで起業する際は日系移民からの投資、または日本からの投資が多いそうです。実際アメリカに居続けるかわからない日本人にアメリカ人が投資するというケースは少ないそうです。アメリカにある企業が上場するということは日本での規制とアメリカでの規制の両方をクリアせねばなりません。日本は上場するまでが厳しく、アメリカは上場してからが厳しい現状がありコンプライアンスを常に更新し続ける必要があるそうです。

約1時間にわたる講演会はあっという間に過ぎ、参加者からの質問タイムが始まりました。事前に募ったオンラインを通じての窪田氏への質問では

・スタートアップ企業の人材に求められる気質は?

・日本とアメリカの株式市場の違いは?

・バイオベンチャーにおけるIT技術利用の展望は?

などなどたくさん寄せられました。

また「窪田博士への質問がある方は挙手をお願いします」というアナウンスとともに続々と上がる手。皆さん窪田氏の話に興味津々でした。

その後は待ちに待った紀伊國屋様の提供による窪田氏の著書『極めるひとほどあきっぽい』のプレゼントクイズ。我こそはと目を輝かせて質問を待つ学生の姿が目立ちました。中には講演会では触れなかった「好きなスポーツは?」という難問も。しかし「テニスです」と自信満々に答える姿が見れました。窪田氏が出演なさったテレビ番組「夢の扉+」を事前にチェックしてきたそうです。正解者は窪田氏と記念撮影。皆さんとても嬉しそうでした。

[1]: Visiongain report December 2013: Macular Degeneration (AMD) and other Retinal Diseases: World Drug Market 2014-2024.

[2]: :  The Burrill & Company 25th Annual Report on the Life Sciences Industry, Page 33.

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窪田氏との記念撮影

 

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交流会では窪田氏と話すために長蛇の列が

窪田氏は薬剤ベンチャーについて分かりやすく説明くださり、医学に関して知識のない私たちでも理解を深めることができました。また起業家として、イノベータ―としてのエッセンスもたくさん教えていただき皆さんいい刺激を受けられたのではないでしょうか。

今回のSIJPの講演会も大成功でした。

次回6月14日の講演会はニコニコ動画の北米展開を担当するniconico.comの代表取締役社長James Spahnさんの講演会と交流会とサッカーワールドカップの日本戦観戦会です。参加お待ちしています!

詳しくはhttp://sijp.orgでお知らせします。

 

著:箕浦 志帆

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